残念姫、王子に溺愛される
「緋月、久しぶり!」

後日。
歩稀は、緋月を飲みに誘った。

歩稀と緋月は、中高大学の同級生。
緋月の父親は姫乃原の子会社の社長で、恋羽の父親の親友。
そして緋月は恋羽の父親の秘書として働いている。

聖王財閥が飛び抜けてトップに君臨しているため、誰もが歩稀には一目置き、更に歩稀は“天性の王子”と言われていた。

そのため歩稀には誰も簡単に近づけず、距離を置かれていた。

そんな中、緋月だけは「“凄いのは君の父上”で君が凄いわけじゃない」と言い、普通に接してきていた。

歩稀にとってそれはとても嬉しくて、二人は仲の良い友人関係だ。

「歩稀、久しぶりだね!
大学二年くらいまではよく遊んでたけど、三年になって大学と仕事ばっかだったでしょ?
久しぶりに連絡が来て、びっくりしたよ!」

「うん、聞きたいことがあるんだ!」

「うん、何?」

「恋羽嬢のこと、教えて?」

「………」

「今、どんな物にハマってて、休日はどんな風に過ごして、どんな男が好きで、好きな食べ物、嫌いな食べ物……
何でもいいからさ!」

「………は?
――――――どうして?」
緋月は少し固まり、そして鋭い視線を送るように見据え言った。

「知りたいから。
調べるより、一番近い人間に聞いた方が早いだろ?
緋月は、恋羽嬢と幼なじみなんだから!」

「悪いけど、断るよ」

「どうして?」

「どんな理由があるかわからないけど、恋羽は僕の大切な人だからね。
そんな簡単に教えないよ」

「“ただの”幼なじみなのに?」

「なんか、言い方にトゲがあるね」

「だから!どうして!?」

「逆に、聞いてどうしたいの?」

「口説きたいから」

「は?冗談だよね?(笑)」

「本気だけど」

「何言ってるの?
散々、女で遊んできた奴が!
僕、帰るね」
緋月は千円札を数枚置いて、席を立った。

「は?
緋月!!」

歩稀は緋月を追いかけ、その背中にぶつけるように呼びかけた。


「恋羽嬢のことが、好きなんだ……!!!」と―――――


歩稀の言葉に緋月が目を見開き、振り向いて鋭い視線を向けて言った。


「悪いけど、歩稀の“そうゆう言葉は”信用出来ない」


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