残念姫、王子に溺愛される
休日。

昼前にある公園で待ち合わせた、歩稀達五人。
恋羽のお気に入りのあの公園だ。

この公園には、桜の木は3本程しかない。
しかし人はそんなに多くなくて、何より景色が格別だ。

歩稀達は、景色を眺めていた。

「ところで、タツシ」

緋月に言われ「ん〜?」と返事をする、タツシ。

「どうしたの?
タツシが、花見なんてびっくりしたんだけど!」

「たまにはいいじゃん!
酒を飲みながら、花を見るってのも!」

「タツシの場合、花より団子……いや、花より美女だろ!」
歩稀に突っ込まれる。

「そう?(笑)」

「それにしても、景色綺麗ね!」
マリホが景色を見ながら、歓喜の声を上げる。

「フフ…ですよね!
ここ、夜に来るととってもロマンチックなんですよ!
是非、緋月くんと来てみてください!」

「え?あ、そうね。
恋羽ちゃんも、歩稀と来たことあるの?」

「あ、いえ…夜はありません。
日中に、一度だけ」

「フフ…“ここで!”恋羽が俺の想いに応えてくれたんだよね!」
恋羽の腰を抱いて、微笑んだ歩稀。
恋羽の髪の毛にキスを落とした。

「あ…うん//////」
「フフ…ラブラブね!」

そんな三人を見ながら、タツシが隣に立つ緋月をそっと見つめた。

「………」
恋羽を見つめる緋月が、なんとも言えない表情だった。

穏やかで柔らかくて、そして…甘い雰囲気と表情。

あぁ…やっぱこいつ……
好きなんだ……!
お姫様のこと。

緋月に声をかけた。
「緋月、聞きたいことあんだけど」

「何?」

「マリホのどこが好きなの?」

「は?」
隣に立っているタツシを見る。

「お前“本当は”お姫様のことが好きだろ?
あ、もちろん“女としてな”」

「なんで、そんなこと聞くの?」

「お前とお姫様は、兄妹みたいなんだろ?
なのに歩稀は、去年初めてお姫様のことを知った。
お前と歩稀は中学ん時からの友達なのに。
普通、おかしいだろ?
わざわざ紹介しなかったとしても、何かの形で会ったりとかするはず。
なのに、知らないっつうことは、どう考えても“緋月がわざと会わせなかった”としか考えられない」

「………」


「だから、聞いてる。
本当は緋月。
“女として、姫乃原 恋羽が好きだろ?”」

タツシが緋月を見据えている。

緋月はその時、はっきり反論出来なかった。


< 41 / 48 >

この作品をシェア

pagetop