残念姫、王子に溺愛される
“散々、女で遊んできた奴が!”


その言葉通り、歩稀は学生の頃、女性に対し散々な扱いをしてきた。

聖王財閥の令息で、完璧な容姿、賢く、物腰が柔らかい。
まさに紳士の歩稀の周りには、沢山の人間がいた。

歩稀は“自分が認めた相手以外は”その相手を利用し、まるで道具のように自身の利益のために使っていた。

特に女性には、ハニートラップを仕掛けさせて情報を得たり、ライバルを蹴落としたりしていた。

そして当時緋月が交際していた彼女にも手を出し、利用したことがある。

緋月に拒否されるのはわかっていた。

しかし、どうしても恋羽を手に入れたかった。

あのパーティーの日から、常に恋羽のことが頭に浮かび、離れないのだ。

それなら、もう…
ゆっくり、俺という人間を受け入れてもらうしかない。

歩稀は、意を決したように歩き出した。


――――――――――
――――――…………………
こちらは、恋羽。
自室で趣味の手芸をしていた。

「お嬢様、失礼します!」
「ん?」

家政婦が入ってきて視線を向けると、その後ろから緋月が入ってきた。

「恋羽、ケーキ買ってきたよ!
食べよう?」
「あ、ありがとう!」

微笑む緋月に恋羽も微笑み返し、作業中の道具などを端に寄けた。

「わぁ〜、沢山あるね!」
「恋羽、先に選んで?」

「え?でも、緋月くんが買ってきたんだし、先に……」
「いいから!」

「うん、じゃあ…
この、ロールケーキがいいな!
沢山、フルーツが入ってるし!」
「ん」

家政婦が「では、お皿に取り分けてきますね!」と微笑み、部屋を出ていった。

「マリホさんは元気?」

マリホは、緋月の恋人。
緋月は微笑み頷き「良かった!」と微笑み返す恋羽を見据えた。

「恋羽」

「ん?」

「あれから、歩稀と会った?」

「え?どうして?」

「ちょっと、気になって」

「ジャケットを返してからは、お会いしてないよ?」

「そっか…」

「どうして?」

「ううん」

「素敵な方よね!」

「は?」

「緋月くんはいいなぁ〜
お友達だもんね!」

「素敵な方か…」

「ん?」

「歩稀には、気をつけて?」

「え?どうして?」

「………ね?」 
優しく頭を撫でる、緋月。

恋羽は首を傾げていた。


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