残念姫、王子に溺愛される
歩稀は、自身の学生の頃の話を“包み隠さず全て”恋羽に打ち明けた。

友人を自身の利益のために利用してきたことや、女性を使って騙したり、陥れたりしてきたこと。

そして、緋月の恋人を傷つけたことも。

恋羽にとって、耳を塞ぎたくなる事実ばかりだった。


「――――どうして……こんな話を?」
恋羽が問いかける。

「君に対して“誠実でいたいからだよ”」

「え?」

歩稀の運転する車が、路肩に止まる。

ハザードの音が、カチッカチッとする中……
歩稀が恋羽を見据えた。

「僕は、恋羽が好きなんだ……!」

「/////え……//////」

「だから全部、包み隠さず話した。
こんな話をしたら、逆に信用してもらえないと思ったけど……
“信じてもらうには”ちゃんと向き合わなきゃって!」

「聖王様…」

「恋羽、言ってたよね?
“失敗は誰にでもある”って」

「え?あ…はい」

「だからね。
一度でいいんだ。
僕を信じてほしい。
それで、僕の恋人になって?」

「………」

「………」

「………」

「やっぱ……信用出来ない…よ、ね……?」

「…………時間を…」

「ん?」

「少し、時間をいただけますか?」

「も、もちろん!」

そして………その後、道の駅で海鮮を堪能し、自宅に送ってもらった恋羽。

歩稀と連絡先を交換し、別れた。

その日の夜。
歩稀からメッセージが入った。

【恋羽、今日は話を聞いてくれてありがとう!
楽しい時間をありがとう!
また、連絡していいかな?】

【はい。
私も、今日とても楽しかったです!
きちんと考えて、お返事しますね(⁠•⁠‿⁠•⁠)】

返事して、恋羽はベッドにゴロンと寝転んだ。

手首に触れ、なぞる。
もちろんあの日の傷は、既に治っていて傷痕もない。

歩稀の話を聞いて、正直ひいた。
あまりにも酷い仕打ちだったから。

しかし、手当てしてくれた歩稀の手の感触や、優しい言葉と行動が忘れられない。

そして、目が合った時の息が止まるほどの衝撃も………


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