残念姫、王子に溺愛される
一週間、経った―――――

しかし恋羽は、答えを出せずにいた。
恋羽も一度、交際していた男性に裏切られたことがあるからだ。

その男性は、姫乃原グループの令嬢の恋羽に、ことある毎に金の無心をしてきたのだ。
理由は、親の手術費やその後の介護のための資金など。

しかし彼は、そのお金でギャンブルに明け暮れていた。

緋月のおかげで発覚したのだが、それが原因で恋羽はしばらく人と関わることも出来なくなるほどに傷つき、苦しい思いをしたのだ。

次、裏切られたら……きっともう二度と、人を信じられなくなるだろう。

そんな思いが、恋羽にブレーキをかけていた。


―――――――そして恋羽は、気分転換に外を散歩していた。

恋羽のお気に入りの公園があり、そこは高台で景色も綺麗だ。
そして、人気もほとんどない。

そこのベンチに座って空を見上げることが、最近の恋羽の癒しだ。

するとそこに、歩稀からメッセージが入ってきた。

【今、いいかな?】
【ごめんね。恋羽から連絡があるまで待とうと思ってたんだけど、どうしても君に会いたい。
今から、会ってくれないかな?】

恋羽は無意識に【はい、大丈夫です】と返事していた。

公園の場所をシェアすると、20分程して歩稀が現れた。

「恋羽!」

「あ!歩稀さん!」

「あ…/////
今、名前呼んでくれたね!
フフ…嬉しいな!」

「………あ…/////」
(私、無意識に……//////)

「ごめんね。
君に会いたくて、我慢出来なかった」

「……/////」

どうしよう……
あんなに悩んでいたのに、今会えたことが凄く嬉しい!

私……歩稀さんのこと……//////

「わぁ〜!景色、綺麗だね!
こんな所があったんだ〜!」

柵の方まで行き、見渡す歩稀。
振り向き、恋羽に微笑んだ。

微笑んでいる歩稀が、キラキラ輝いていた。

なぜか、恋羽の目から涙が溢れていた。

「え……恋羽?
どうして、泣くの?
僕、君を傷つけるようなこと……」

「違うんです!」
慌てたようにハンカチを取り出し、恋羽の目元を拭く歩稀を恋羽は真っ直ぐ見上げた。

「恋羽?」

「好きです、私も……!」

恋羽ははっきりした口調で、歩稀に言い放った。


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