冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
 王宮に戻った翌日。仕事に入ると、すぐ呼び出しを受けた。

 呼び出し人はリリアンの上司であるセレスタンという大臣だ。リリアンの業務はセレスタンの補佐であり、ゆえになにかがあると呼び出される。女官の合同執務室を出て、セレスタンの執務室に向かう。王宮の廊下では下働きのメイドたちが忙しなく動いていた。

 彼女たちはリリアンを見て頭を下げる。リリアンも軽く頭を下げて返事とした。

「ねぇ、あの人って――」
「唯一の庶民出身の女官さまじゃない?」

 メイドたちがこそこそ話をしているのがわかる。

 こういうのはどれだけ経っても慣れないものだ。

「優秀なのに、出自が出自だからって――王女殿下付きになることが許されなかった人よね」

 自然と歩くペースが速くなった。

 普通、優秀な女官は王妃や側妃、王女に付くものだ。しかし、リリアンは出自ゆえに王族に付くことができなかった。

 王妃や二人の王女は構わないと言っていた。特に第二王女はリリアンが良いとまで言ってくれた。だが、伝統を重んじる古参貴族たちによって却下されてしまった。

 曰く、庶民にそんな重大な役目を任せることなどできない――と。

(そんなに生まれって大切かしら?)
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