冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
リリアンにとって、財務大臣のカンディードとはたまにかかわる程度の人物でしかない。
それも、セレスタンの遣いで会うくらいだ。だからこそ、個人的なことという部分が引っ掛かった。
(あの人、良くも悪くも私に無関心だと思ってたけど……)
大臣によっては庶民階級出身のリリアンを露骨に嫌う者もいる。
比べ、カンディードはリリアンに無関心だった。仕事ができるのなら、出自などどうでもいい――と言いたげな態度は、リリアンにとって気が楽なものだ。
もちろんセレスタンのように好意的なのもある意味楽だが、こういう貴族が少ないことは十分理解した。なので、期待しない。
女官の執務室に戻り、淡々と職務をこなしているとあっという間に終業時間だ。
リリアンは仕事の後片付けをして、女官の制服から私服に戻る。業務中以外の制服着用は認められていないためだ。
カンディードの執務室に向かうため廊下を歩いていると、華やかなドレスをまとった女性が前から歩いてくる。彼女は怒りを隠しておらず、連れてきたのであろう自身の侍女に当たっているようだった。
「まったく、どうしてヴェルディエ伯爵はわたくしに興味を持ってくださらないの!?」
すれ違いとき、女性の怒りに満ちた声が耳に届いた。
(ヴェルディエ伯爵って、確か――ほかでもない、財務大臣じゃない)
どうしてだろうか、今、無性に嫌な予感がする。今すぐ引き返したい――と思ったが、踏みとどまった。
(いや、直属ではないといえ、上司は上司! きちんと従わなくちゃ)
これが原因でクビになったらたまったものではない。リリアンは軽く頬を叩いて、足を前に踏み出していく。
それも、セレスタンの遣いで会うくらいだ。だからこそ、個人的なことという部分が引っ掛かった。
(あの人、良くも悪くも私に無関心だと思ってたけど……)
大臣によっては庶民階級出身のリリアンを露骨に嫌う者もいる。
比べ、カンディードはリリアンに無関心だった。仕事ができるのなら、出自などどうでもいい――と言いたげな態度は、リリアンにとって気が楽なものだ。
もちろんセレスタンのように好意的なのもある意味楽だが、こういう貴族が少ないことは十分理解した。なので、期待しない。
女官の執務室に戻り、淡々と職務をこなしているとあっという間に終業時間だ。
リリアンは仕事の後片付けをして、女官の制服から私服に戻る。業務中以外の制服着用は認められていないためだ。
カンディードの執務室に向かうため廊下を歩いていると、華やかなドレスをまとった女性が前から歩いてくる。彼女は怒りを隠しておらず、連れてきたのであろう自身の侍女に当たっているようだった。
「まったく、どうしてヴェルディエ伯爵はわたくしに興味を持ってくださらないの!?」
すれ違いとき、女性の怒りに満ちた声が耳に届いた。
(ヴェルディエ伯爵って、確か――ほかでもない、財務大臣じゃない)
どうしてだろうか、今、無性に嫌な予感がする。今すぐ引き返したい――と思ったが、踏みとどまった。
(いや、直属ではないといえ、上司は上司! きちんと従わなくちゃ)
これが原因でクビになったらたまったものではない。リリアンは軽く頬を叩いて、足を前に踏み出していく。