冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
 突然の言葉にリリアンは目を見開いた。

(合格って――なに?)

 聞き間違いだろうか――と思うよりも先に、カンディードが立ち上がる。

 彼は執務机のほうに向かい、引き出しの中からなにかを取り出した。

「現在貴族の大半がどちらかの派閥についていると言っただろう」
「……はい」

 カンディードの動きを目で追いつつ、リリアンはうなずいた。

「我がヴェルディエ伯爵家は現状どちらにもついていない。そして、今後どちらかにつくこともない」

 長い脚を動かして、あっという間にリリアンの前に現れるカンディード。その手には一枚の紙が握られていた。

「これは婚約の書類だ。ここにサインしろ」
「――は?」

 意味がわからず、リリアンは大きな声を上げた。

「婚約届というやつだ。それくらいわかるだろう」

 大きなため息が聞こえる。リリアンが驚いているのはそこではない。
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