冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
(それって、簡単に結婚相手を選べないということ?)
……なら、なにも無理に結婚しなくてもいいだろう。独身を貫くことだって一つの選択肢だ。
「独身を貫くというのは、愚策だな。私の元にどこぞの貴族令嬢が押しかけてくることが可能になる」
リリアンは先ほどすれ違った貴族令嬢を思い出す。
彼女はカンディードの元を訪れていたようだ。――カンディードを自身の家の派閥に引き込むためだったのか。
「貴族令嬢とは、思うより馬鹿ではない。あの手この手を使って私を引き込もうとするだろう」
ヴェルディエ伯爵家の持つ権力は大きなものだと聞く。
カンディードを引き入れることができたなら、派閥は大きく成長する。
「私は王位争いなど面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ」
テーブルの上にある婚約届を見つめる。カンディードの名前は既に記入されていた。
「別に心身ともに妻になってほしいわけではない。名前を貸せといっているだけだ」
「それは」
「結婚とは一種の契約。これは……そうだな。妻としてお前を雇いたいということ。雇用契約を結ぼうとしている」
「雇用契約ですか」
「そして、これでは私側にしかメリットがない。というわけで、お前の一番欲しいものをなんでも用意する」
その言葉に反応する。顔を上げると、カンディードの瞳がリリアンを見つめている。試すような視線は居心地が悪い。
「……一番欲しいもの」
「私はお前の身辺を調査した。事情も調査しているぞ」
……なら、なにも無理に結婚しなくてもいいだろう。独身を貫くことだって一つの選択肢だ。
「独身を貫くというのは、愚策だな。私の元にどこぞの貴族令嬢が押しかけてくることが可能になる」
リリアンは先ほどすれ違った貴族令嬢を思い出す。
彼女はカンディードの元を訪れていたようだ。――カンディードを自身の家の派閥に引き込むためだったのか。
「貴族令嬢とは、思うより馬鹿ではない。あの手この手を使って私を引き込もうとするだろう」
ヴェルディエ伯爵家の持つ権力は大きなものだと聞く。
カンディードを引き入れることができたなら、派閥は大きく成長する。
「私は王位争いなど面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ」
テーブルの上にある婚約届を見つめる。カンディードの名前は既に記入されていた。
「別に心身ともに妻になってほしいわけではない。名前を貸せといっているだけだ」
「それは」
「結婚とは一種の契約。これは……そうだな。妻としてお前を雇いたいということ。雇用契約を結ぼうとしている」
「雇用契約ですか」
「そして、これでは私側にしかメリットがない。というわけで、お前の一番欲しいものをなんでも用意する」
その言葉に反応する。顔を上げると、カンディードの瞳がリリアンを見つめている。試すような視線は居心地が悪い。
「……一番欲しいもの」
「私はお前の身辺を調査した。事情も調査しているぞ」