冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
 遠回しに脅されているような感覚だ。

「お前の一番欲しいものも、私は把握している。大金が必要なんだろ?」
「それは」
「先ほどから言っている。私はお前を『雇いたい』と。つまり、これは新しい仕事を提案している」

 リリアンは息をのむ。

 カンディードは淡々としている。感情の揺れなどちっとも見せない。いや、むしろ感情が揺れているかどうか……。

 でも、リリアンだって負けない。負けたくない。

 息を吐いて、カンディードを見つめる。双眸に宿った試すような色にリリアンの心が騒ぎだす。

「では、私から質問を。どうして私なのでしょうか? 平民の女性なら、私以外にもごまんといますよ」

 先ほどからの話を聞くに、カンディードはリリアンに狙いを定めている。いわば一本釣りだ。

 リリアンに断られた場合の労力は計り知れない。

「頭の切れる女だと聞いていたが、こういうところは馬鹿なのだな」
「……馬鹿ですって?」
「あぁ、馬鹿だな。雇用主として、少しでも優秀なやつを雇いたいと思うのは当然だろう」

 挑発的な眼差しに、リリアンは軽くひるんだ。
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