冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
「……一度、持ち帰って検討してもよろしいでしょうか?」
けど、すぐに答えを出す勇気はなかった。
恐る恐るリリアンが問うと、カンディードは首を縦に振る。
「一週間後、どうするかの返答をくれ。ゆっくり考えてくれて構わない」
「承知いたしました」
頭を下げて、リリアンは立ち上がる。テーブルの上にある婚約届は、カンディードに手渡す。
「持っていてください。私が持っているより、安全でしょうから」
「……安全、か」
「えぇ、どこで落とすかわからないので」
なんせ、仕事以外はぽんこつなリリアンだ。いつドジをやらかすかわからない。
「私、これ以上ここで仕事をしていても出世が見込めないことは理解しています」
彼の瞳をじっと見つめた。
「お仕事としては、破格の条件だと思っています。前向きに、検討してきます」
頭を下げて、逃げるように執務室を飛び出した。
胸の鼓動が早足になる。廊下を歩くスピードも、心なしか速い。
(ヴェルディエ卿と結婚したら、私は伯爵夫人)
きっと、世間ではシンデレラストーリーと呼ばれるものだ。
しかし、たとえ結婚したところで双方に愛情はない。リリアンは金のために彼と結婚し、彼は女性を寄せ付けないためにリリアンを防波堤にする。
(きれいごとじゃやっていけない。愛で食べていくことはできない)
嫌というほどに知った。
この世は、どろどろとしていて悪意が渦巻いているのだと。
けど、すぐに答えを出す勇気はなかった。
恐る恐るリリアンが問うと、カンディードは首を縦に振る。
「一週間後、どうするかの返答をくれ。ゆっくり考えてくれて構わない」
「承知いたしました」
頭を下げて、リリアンは立ち上がる。テーブルの上にある婚約届は、カンディードに手渡す。
「持っていてください。私が持っているより、安全でしょうから」
「……安全、か」
「えぇ、どこで落とすかわからないので」
なんせ、仕事以外はぽんこつなリリアンだ。いつドジをやらかすかわからない。
「私、これ以上ここで仕事をしていても出世が見込めないことは理解しています」
彼の瞳をじっと見つめた。
「お仕事としては、破格の条件だと思っています。前向きに、検討してきます」
頭を下げて、逃げるように執務室を飛び出した。
胸の鼓動が早足になる。廊下を歩くスピードも、心なしか速い。
(ヴェルディエ卿と結婚したら、私は伯爵夫人)
きっと、世間ではシンデレラストーリーと呼ばれるものだ。
しかし、たとえ結婚したところで双方に愛情はない。リリアンは金のために彼と結婚し、彼は女性を寄せ付けないためにリリアンを防波堤にする。
(きれいごとじゃやっていけない。愛で食べていくことはできない)
嫌というほどに知った。
この世は、どろどろとしていて悪意が渦巻いているのだと。