冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
 カンディードから提案を受けた三日後。

 終業後のリリアンは王都のレストランにいた。庶民派のレストランということもあり、店内はとても賑やかだ。

 飲み物を口にしつつリリアンがぼうっとしていると、自身の目の前に誰かが腰かける。

「ごめんね、お義姉ちゃん」
「ううん、呼び出したのはこっちだし。なに食べる?」
「うーん」

 リリアンが差し出したメニュー表を見たロジアネがうなった。

「お義姉ちゃんは?」
「私はシェフの気まぐれディナー」
「なにそれ」
「名前のとおりよ」

 何度か後輩の女官とここにきているリリアンは、この店のシェフの腕がとてもいいことを知っていた。

 だから、お任せでも大丈夫だと知っている。

「このお店、後輩と時々来るの。だから、腕は保証するよ」
「じゃあ、私もそれで」

 ロジアネが店員を呼び、注文する。

 そして、一息ついてリリアンを見つめた。

「……仲のいい後輩、いるんだ」

 ロジアネがぽつりとこぼした。

「まぁね。といっても、一人だけ」

 基本女官たちは庶民階級出身のリリアンを異質として、遠巻きにしている。

 そのため、業務以外ではほとんど話さない。

 しかし、一人だけ例外がいた。彼女はリリアンに懐いて、なにかと教えを乞うてくるのだ。
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