冷徹大臣の雇われ妻~庶民出身成り上がり女官の次の就職先は伯爵夫人ですか~
「そうだ。最近下町でまたうわさになってるよ。――王太子の話」
「……あぁ、あれね」

 ロジアネの言葉にリリアンは肩をすくめた。

 現在、このバルビゼ王国に王太子はいない。というのも、現在王宮では熾烈な次期王位争いが起きているのだ。

「どっちが優勢とかないの?」

 純粋な問いかけに、リリアンは首を横に振った。

「優勢とか劣勢とか、そういうのないのよ。完全に互角なの」

 第一王子と第二王子。二人はそれぞれ貴族を取り込み、自身の派閥を作っている。

「お妃さま方も自身の息子を次期国王にしようと必死だし。積極的に息子の派閥に貴族を引き込んでいるわ」

 そのせいか、貴族の世界は今、とてもごちゃごちゃしているという。

 庶民のリリアンには直接関係のあることではないが、王宮で働いている以上無視はできない。

「王妃殿下にご子息がいらっしゃったら一番よかったのだけどね」

 現在の国王には三人の妃がいる。

 侯爵家出身の王妃と、伯爵家出身の二人の側妃だ。

 国王は王妃を一途に愛していたが、政治的な絡みで側妃を持つことを強制された。

 そして、代々国の重鎮だった二つの伯爵家から妃を迎えたのだ。

 国王は義務的に側妃の元に向かい、二人は同時期に懐妊した。さらに、二人とも王子を産んだことにより――この問題が勃発したのだ。

 王妃との間にも二人の子がいるが、共に王女。ゆえにこの問題が収まる気配はない。
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