呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 どうやらそれは、イブリーヌにとっては都合のいいまやかしであったようだ。

『ほらね。やっぱり、コクマの言った通りだった』
『戻ってくるべきじゃ、なかったんだよ……』
「黙って……!」

 亡霊達が耳元で囁く声を拒絶した彼女は、苦しそうに唇を噛み締めがら目を閉じる。

(惑わされては、いけない)

 彼らの声に耳を傾けたら、人間として生きる意味がないからだ。

「君の気持ちを、聞かせてくれ」

 オルジェントは彼女の頬を安心させるように、優しく撫でつけた。

「私は、陛下の妻です……」

 イブリーヌが夫に伝えたかった言葉は、山程ある。
 彼女はそれを口に出してもいいものかと迷いながら、苦しい胸の内を明かした。

「好きでも、嫌いでも……。声に出したところで、その事実は変わりません」
「イブリーヌ」

 夫が愛の言葉を口に出来なかったとしても、構わない。
 彼が自身を愛している確証さえ得られたのなら、それだけで――イブリーヌは充分だった。
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