呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「皆さんが、人々へ危害を加えることは……望みません……」
『どうして?』
『みんな、壊しちゃおうよ』
『あんなにたくさん、苦しい思いをしたのに』
『復讐しないの?』

 彼らは好戦的な言葉ばかりを述べるが、イブリーヌが亡霊達の言葉を受け入れることはなかった。
 悪しき魂を先導すれば、夫と敵対する羽目になるからだ。

「私は陛下と……争うことなく、穏やかに暮らしたいのです……」
『それが女王の望み?』
『叶えなくちゃ』
『従わない奴らは?』
「――俺が全員、切り刻んでやる」

 亡霊の声を耳にしたオルジェントは背中の大鎌を引き抜くと、彼らに切っ先を向けた。
 その姿を目にしたイブリーヌは慌てたが、悪戯好きの悪しき魂達は、これくらいはっきりと宣言しなければ。
彼女の命令を聞いてくれないのは明らかで……。

『消えるのは嫌だ』
『みんな、イブリーヌの幸せを願っている』
『人間を襲うような奴らは、女王のそばにいる資格がない』
『私達は、いい子!』

 オルジェントの脅しが効いたのか。
 彼らは口々に囁き合うと、イブリーヌの指示なく人間に危害を加えることはしないと彼に約束した。
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