呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『すべてが丸く収まって、本当によかったね』
『ぜんぶ、わたしのおかげ……』

 幸せいっぱいの主達を邪魔しないように遠くから見つめていたのは、白と黒の猫だった。
 新たに仲間として加わったコクマへジト目を向けたハクマは、イブリーヌが聞きづらかったことをさり気なく問いかける。

『どうして二人の仲を引き裂く女を、焚つけたんだい』
『イブリーヌを女王として、覚醒させるためには……。ちょうど、よかったから……』
『他にやりようは、いくらでもあっただろう』
『邪魔者も消えて、わたしの望みも叶って、イブリーヌも幸せ。一石三鳥』

 コクマは悪びれもなくハクマに告げると、互いしか見えていない夫婦の間に無理やり割って入るように。ぴょんっと地を蹴った。
 腰元に何かが当たったことに気づいたイブリーヌが、オルジェントから視線を移せば。
彼女の身体を器用によじ登った黒猫が、尻尾を振りながら存在をアピールしてみせた。

『わたしも、愛して』
「黒猫さん……」

 優しく微笑んだイブリーヌが、黒猫の艶やかな四肢を撫でつける。
コクマは勝ち誇った視線をオルジェントへ向けた。
それを受け止めた彼は、露骨に眉を顰める。
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