呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「貴様……」

 最愛の妻との時間を邪魔するものは、人間でなくても許せないようだ。
 黒猫は地を這う低い声で彼に威嚇されたが、まったくと言っていいほどに気にする様子を見せなかった。

「陛下……?」
「ハクマ」

 不穏な空気を悟ったイブリーヌが夫を不思議そうに見つめれば、静かな怒りを抱いた彼が、白猫を呼ぶ。
 気乗りしない様子で彼女の元へ歩き出したハクマは、自由奔放な番をイブリーヌから引き剥がすために地を蹴った。

「猫さん達、喧嘩は――」

 不穏な空気を察知したイブリーヌは、ハクマに襲いかかったコクマを止めようとしたが――。

 彼女の言葉は最後まで、声にならなかった。
 黒猫の隣に白猫がピトリと寄り添い、窮屈そうにイブリーヌの胸元にすっぽりと収まったからだ。

「……そうじゃないだろう」

 額に手をやったオルジェントは、落胆した様子で項垂れた。
そんな彼の姿を目にしたハクマは、明るい声で彼を慰める。
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