呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 よく顔を見せる貴族の名を覚え、人々に悪事を働く下級霊を討伐する夫に付き添い、皇妃として相応しい教養を学びながら、数分に一度オルジェントから愛を囁かれる生活。

 最初のうちは体力が続かずへばっていたが、彼と過ごす時間が増えるたびに。
だんだんとそれが当たり前になっていく。

(慣れないうちは、すごく大変だったけど……)

 大好きな人と一緒にいられるだけで幸せな気分に浸れるイブリーヌにとって、一人寂しく猫達と過ごし続けた時間よりもずっと。
今のほうが充実した生活を、謳歌できている。

(いつまでも陛下と一緒に、いられますように……)

 彼女は毎日のように空へ祈りを捧げながら、愛を囁く夫の腕の中で身を委ねていた。

「イブリーヌ。今日は君に、大切なことを伝えなければならない」
「な、なんでしょう……?」

 深刻そうな顔をした彼から改まって告げられたイブリーヌは、思わず息を呑む。

「実は――」

 苦しそうに眉を伏せるオルジェントの唇から紡ぎ出される内容が、離縁の申し出なのではと恐れたからだ。
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