呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『おいで、コクマ。オルジェントの一投足にカリカリするのは、よくないよ』
『あなたに、言われたくない……』

 白猫に声をかけられたコクマは不満そうに尻尾を揺らしながら。
トボトボと番の元へと帰って行く。

(返事。ちゃんと、しなくちゃ……!)

 その様子を目にした彼女は、慌てた様子で夫に告げた。

「ご、ご心配には、及びません……!」
「ああ。テランバ公爵は娘とは違って、まだ話が通じる人間だ。大人しく、俺に抱かれたままでいてくれるな?」
「は、はい……。もちろん、です……」

 これから対峙する相手は、ヘスアドス帝国の公爵だ。
 皇妃として相応しい立ち振舞いを心がけなければ、何を言われるかなどわかったものではない。

 イブリーヌは両手を握りしめると、緊張した様子で作り笑顔を浮かべながら。
執務室へ入室した公爵を、愛する夫とともに出迎えた。

「この度は……。我が愚娘がとんだご迷惑を……」
「謝罪はもういい。決定事項だけ聞かせろ」
「はっ」

 愛する妻との二人きりの時間を確保したい彼は、苛立ちを隠すことなく。
低い声でテランバ公爵に命じる。
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