呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「オルジェント様は、妻を大切にしてくださる……。とっても素敵な、殿方です……」
「俺が優しい男でいられるのは、イブリーヌの前だけだ」

 猫達と戯れる妻の姿を目にしたオルジェントが優しく微笑めば。
その笑顔にやられたイブリーヌの頬が朱に染まる。
 林檎のように顔を赤くした妻の姿が、かわいくて仕方ないようだ。
彼の微笑みは、ますます深まっていった。

「その笑顔は、反則です……」
「照れているイブリーヌの姿も、愛おしくて堪らない」

 夫からまさかの反撃を受けた彼女は、目を白黒させて狼狽える。

「俺の言葉を耳にして行動する仕草の、一つ一つが愛らしすぎて……。今すぐに、食べてしまいたいくらいだ……」

 最愛の妻の耳元で囁いた彼は、それを実践するかのように。
彼女の耳たぶへ、カプリと音を立てて噛みついた。

「~っ!」

 声にならない悲鳴を上げたイブリーヌが唇をパクパクと動かせば。
呆れたように胸元の猫達が顔を見合わせ、床の上に飛び降りた。

『僕達は、お邪魔みたいだね』
『もげちゃえばいいのに……』

 白猫とジト目で不穏な言葉を呟いた黒猫が気を利かせて、部屋から出て行く。
 ここからは、二人だけの時間だ。
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