琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
ここで声を掛けるのはよくないかしら。でも、わたしカウンセラーじゃないの。
これただの会社の面談だから。

一緒にお蕎麦を食べたときはもっと話が出来たのに、どうしたというのだろう。

「結婚が嫌なんですか」「別居って本当ですか」

「「え?」」

同時に声を掛け同時に首を傾げる。

もしかしたらいまわたし自身のことを聞かれた?

「社長と別居されているとかーーー」

「別居はしていませんよ。どこでそんな話を聞かれたのかはわかりませんけど、うちのことはご心配なく。それよりも伊勢さんの話ですね」

「結婚っていいものですか」

おおう。ストレートに聞かれたな。
いいも悪いもウチは普通の夫婦じゃないし。

「いいものですよ」
わたしは満面の笑みで答える。
社長はわたしの身を守ってくれるナイトだ。あの人以上にわたしの身と財産を守ってくれる人がいるとは思えない。

「伊勢さんはお付き合いされている方とは結婚を考えられないのですか」

わたしの話は終わりにしたい。
これ以上は話すまいと決めて話を振った。

「実は昨日彼女の浮気が発覚しまして。許して欲しいと泣かれました」

「・・・・・・まあ」

それはちょっと修羅場でしたね。
こんなイケメンでも浮気されちゃうのか。正直ちょっとびっくりした。
伊勢さん、ルックスがいい。なのにちょっと口下手ってところも女心を掴んじゃうみたいで年上人気がすごいのだ。
だからこそ前の会社を辞めることになったんだろうけど。

「寂しかったんだそうです」

伊勢さんが淡々と言うものだから余計返事に困る。

「忙しくて会ってくれないあなたが悪いと」

はあ、やっぱりですか。そうくると思った。

浮気の原因がこの会社にあると言われてしまったようなもので申し訳なくなる。

でも彼のような職種の人間は出社して働く勤務時間を制限しても結局自宅で働いてしまい彼女との時間を作るのが難しい可能性がある。仕事中毒だし。
そこをうまくやって欲しいと思うのだけど、それば出来ないからこうやって悩んでいるのだろうし。

「でも彼女はわたしと結婚したいと言うわけです。寂しいから浮気した。ならば結婚したらさみしさはなくなるのでしょうか。
・・・失礼ですが、参考までにご主人が忙しい人妻代表の葵羽さんのお話をお聞きしたいんです」

あーーーーなるほど。

まあそう言いたくなるのもわかる。
わかるけれども、ウチの場合はそういうものではないから何の参考にもならないからアドバイスも出来ないんだけど。

でも、伊勢さん今彼女と別れたって言わなかった。
伊勢さんって彼女の浮気を許すタイプの人っぽい。それとも泣かれておし負けちゃったか。

私は浮気するような人とは別れちゃえ派だ。
だって彼女(または彼)はきっとまた(浮気を)やる。
自分だったら絶対に許せない。

でも、世の中は私みたいな考え方をする人ばかりではないことはよーくわかっている。
浮気されても必ず自分のところに帰ってきてくれればいいなんて私には信じられない考え方をする人も、浮気をしてもお互い様の関係だから気にならないなんてドライな人たちもいるし。

だから自分の目線で意見を言うのはよくない。
友達としてのアドバイスであれば「やめとけ、そんな女は」って言うところだけど、ここは会社だしね。


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