琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「葵羽、コーヒー豆ある?」
「それなら冷蔵庫の中にあります。お好みの味かはわかりませんけど。わたし淹れましょうか」
「いや、俺がやるからいいよ。葵羽もコーヒーでいいか?」
「じゃあお願いします。わたしカップ出しますね」
冷蔵庫のドアを開けコーヒー豆を渡し、わたしは食器棚からカップを取り出しカウンターに置いた。
社長は迷いのない手で食器棚を開けコーヒスプーンとミル、ペーパーフィルターを取り出した。
「物の置き場所、よくわかりますね」
驚いてそう言うと
「もともと俺の家だし、俺が準備したんだからわかってて当然だろ」
と呆れ顔をされた。
「でも全部真新しかったし」
それまで住んでいた部屋の1つを渡されたというよりも新築物件に家具、生活用品一式をまるごとオーダーして整えられたファミリーマンションの部屋を与えられたという感じだった。
「家具も家電もリネンも小物も全部俺が選んだ。さすがに搬入なんかは業者だけど、配置を決めたのも小物を片付けしたも俺。自分の部屋の荷物は自分で運んだし」
え?
専門業者に任せた部屋をあてがわれたと思っていたのだけど。
「でも今までそんなこと聞いたことなかった」
「ああ、言わなかったからな。先々の二人の生活のことを考えて俺が動いていたって聞いたら葵羽に自由がなくなるかもと思ったから」
「自由がなくなるってどういう意味ですか」
「ーーーコーヒー飲んでから話をする。先にリビングで待ってな」
座ってろと背中を押されてリビングに追い立てられた。
社長の態度に今からの話がどう転がっていくのか想像が付かない。
「ほら、コーヒー・・・・・・ってどうした、葵羽」
自分の住んでいる部屋のリビングにいるのに落ち着かずそわそわしながら目を泳がせている私を見て社長が思わずといったように笑った。
「ええっと、さっきの言葉通りだとしたら、家具もカーテンも趣味がよくて、社長のセンスってすごいって言うかーーー」
そう、初めてこの部屋に通された時、本当に感動したのだ。
なんていい趣味のインテリアだろうって。
高級なんだろうけど、それを嫌味に感じさせず普段生活するのに重くならない高級感と居心地の良さ。
それは生活をするうちに更に気づかされて。ひとりで暮らすには広すぎるって事を除けば癒やしと快適さを全て備えた最高の住まいだった。
それがみんな社長自らが選んだ物だったとは。
「インテリアコーディネーターさんに丸投げしていたのだと思ってて」
「それは褒めてもらったととっていいのか?」
「もちろんです」
何度も頷くと社長は嬉しそうに目を細めた。
ああそういう顔はちょっと少年みたい。今まで見たことのない表情にちょっとドキッとする。
クリスチアーノ・シュミット社長は彫像のように美しくて、笑顔も造形物のような微笑みのみというイメージだ。
だから昨日からいろいろな表情を見られてとても貴重な体験をしていると思う。