琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
「こんなことをしたら恋人が怒りませんか」

気になっていたことを聞けばクリスの返事は
「恋人って誰」
だった。

「誰って私もどなたかは知らないですけど」

長谷川社長は違うってことは理解したが本命のお相手の名前までは知らない。

「そもそもなぜ葵羽は俺に恋人がいると思うんだ」

「だってそれはーーー」

「噂だろ?」

そう言われてしまうとそうかもしれない。
けれど、そう思われるような行動をしていたのはクリスだ。

「クリスの口からいると聞いたことはないですけど、いないとも言われてませんし」

クリスの言い方にちょっとムッとして言い返してしまう。

「そうか、ちょっとは俺のこと気にしてくれていたってことか」

なぜか嬉しそうにするクリスに更にムッとする。

「私に恋愛の自由があったなんて知りませんでしたけど、クリスには自由があると思ってましたし、だいたいどこで寝泊まりしてるかも知らないし」

別に私に恋愛の自由があっても恋人は作らなかっただろうし、脳内恋人も作らなかったけれど、私に同情して結婚したクリスには自由がある。もちろん叔父たちに付けいる隙を与えては欲しくなかったけれど、究極私たちが離婚をしなければいいだけだ。

でも言えば言うほど「そうか、そうか」とクリスの頬が緩んでいくのはなぜだろう。

「なんなの、もうっ」

腹立ち紛れにクリスの腿をぱちんと叩くとすぐさま叩いた手をぎゅっと握られる。

「今までそういう趣味はないと思っていたけど、葵羽相手ならいいかもしれないな」

「はああああ?」

握られた手を振り払って立ち上がると意外にもあっさりとクリスの手から逃れることが出来た。
さっきはしっかりと抱え込まれて逃げられなかったのに。

「じゃあ今日はここまで。俺はもう少し仕事をしたら寝るから、葵羽は先にバスルームをどうぞ」

そう言って呆然とする私を置いて自分の部屋に入ってしまった。

待って、どういうこと?
話をするっていったじゃないの。それをこんな中途半端でー。
本当にここで生活するの?まさか今夜からここに泊まるつもり?

慌ててあとを追いドアをノックしようとすると室内からクリスの声が聞こえ、その手を止めた。
誰かと何かを話している?
もしかして電話がかかってきたから私との会話を切り上げた?

「ーーーーーーーーーー」

ドイツ語かしら。
仕事の電話をしているのかもしれないとノックするのはやめた。


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