琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
半ば放り出されたような形で置き去りにされた。

5分ほど待ってもう一度クリスの部屋の前に言ったけれど、中からは早口のドイツ語が聞こえてノックするのを諦めた。
やっぱり電話をしているらしい。


・・・・・・バスルーム使いにくいな。

自分のテリトリーであるはずの自宅にクリスがいる。
いや、クリスが用意してくれた夫婦の自宅だからクリスの物でもあるわけだけど。
同じ屋根の下にクリスがいると思ったらバスルームを使うのもドキドキする。
お風呂に入ることにも緊張するだなんて、本当にクリスがここで暮らしはじめたらどうしよう。

自分の部屋に戻りお風呂に入る支度をして再びクリスの部屋のドアの前に立つ。
中の様子を窺ってみるとまだ話し声が聞こえた。

まだ電話をしているみたいーーーでもこれ、イタリア語かも。
何を話しているかはわからないけれど、さっきとは違う相手と話しているのかもしれない。
ドイツの次はイタリア語。
クリスってそんなに忙しいのか。

でもまあ、チャンスだ、今のうちにバスルームを使ってしまおう。



ーーーバスタブに浸かってみたもののやっぱりどうにも落ち着かない。
なんてことだろう、寛ぎスペースであるはずの自宅のお風呂が。

クリスの用意してくれたこの自宅マンション、そこそこに広い。

いったいいくらなのかくらいするものなのか考えるのをやめようかと思うほどには広いし設備もセキュリティーもしっかりしている。

なにが言いたいのかというと、だからバスルームとクリスの部屋は離れているから水音など物音は聞こえたりしない、そう絶対に聞こえない。
それがわかっているのに水音をたてることにも緊張して落ち着かないのだ。

あーーーーもうやだ。

本気でここに住むつもりなのかしら。
そんなことされたら私の心臓がもたないよーーーーー




ーーーーー昨夜は心臓がもたない、などと考えていたのだが、しっかり眠れた。
なんならいつもよりぐっすり。
いやぁ快眠、快眠。

昨夜あれからクリスは部屋から出てこなくて、寝る前の挨拶だけはしておこうとドアの向こうに「先に寝ます。おやすみなさい」と声を掛けて寝たのだ。

クリスはあれからどうしたんだろう。
あんなこと言ってたけど、泊まったりはしてないだろうと思ってる。
着替えだって困るだろうし、夜中に帰ったはずだ。

まさかと思うけど、まだこのうちにいるなんてことは・・・・・・ないよね?


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