琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
ドキドキしながら自分の部屋のドアを開けると、いい匂いがする。

うそ、もしかしてこれって朝ご飯?

リビングルームに入っていくと、予想通りキッチンに立つクリスの姿があった。
私が起きてきたことに気づいたクリスがお皿を並べる手を止める。

「おはよう、葵羽。もう少しで出来るから先に顔を洗ってきたら?」
「オハヨウございます・・・。」

驚いたことに和食だ。
パンにスクランブルエッグなんてものではなく、ご飯にお味噌汁。そしてこの匂いは魚を焼いている。うちの冷蔵庫にあったものなら赤魚の西京焼き。

「ほら、ぼーっとしてないで行ってこい」

追い立てられるようにリビングから出され洗面所に向かったけれど、うーん何だろう寝起きの頭に状況が理解できない。
クリスがまだ家にいてご飯を作っていた。
セットしていない髪形なんてものを見るのも初めてだし。

ホントに泊まったんだな、ここに。

ばしゃばしゃと顔を洗っているうちに目が覚めて、頭が動くようになってくると、いろいろと気が付いてしまう。

今すっぴんにいつものヨレヨレのティーシャツ、短パンなんだけど。
これは着替えた方がいいんだろうか。せめて昨日のワンピースに。
メイクは?メイクはどうする。
このまま部屋に戻ればいいのか?
などと座り込んでうーんと考えていたら「葵羽~朝ご飯できたぞー」と呼ばれてしまった。

ご飯ができちゃったのか。
じゃあできていないすっぴんヨレヨレのこの私はどうする。

えー、もうこれホントどうすんの。
まさか本当にクリスがいるとは思わなかったし。しかも普通に朝ご飯作ってるし。

「まだなのかー」

催促されて諦めがついた。
よし、このまま行こうと。もうさっき既にこの姿を見せてしまっている。

女は度胸だ、諦めも肝心。
髪も直す時間はないから適当に1つに縛ってリビングに戻った。

ダイニングのテーブルに並べられていたのはTHE・和朝食だった。
ご飯に味噌汁、焼き魚、卵焼き。キャベツの即席漬けまで。

「すごすぎる・・・。」

呆然とする私にクリスが「座って」と促す。
おとなしく座ろうとしてハッとする。

「お茶は私が」
「いや、もう準備できてるから」

それもか。
完璧じゃないですか。なんてスパダリ。

全てをあきらめて「いただきます」と手を合わせた。


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