琥珀色の溺愛 ーー社長本気ですか?
結局、出勤の支度が男性より女性の方が時間がかかるからって事で食後の片付けもさせてもらえず、上げ膳据え膳の特別待遇を受けてしまった。

準備を整えて部屋を出ていくと、いつものように髪をセットして高級スーツに身を包んだクリス社長がタブレットを開いて仕事を始めていた。

「すみません、お待たせしましたか」
「いや、そんなことはないよ。少しでも時間があればつい、って悪い癖だな。葵羽が隣にいてくれたらこれからはやらない」
「いえ、別に、そんな」

そう言う意味で言ったわけじゃないけど。
直ぐさまタブレットを閉じて私に微笑みを向けてくる。

その微笑みもあれだ、今までの作り物みたいなやつじゃなくてちゃんと人間味のあるやつなのだから。

そんな笑顔を見せられるとドキドキしてしまうからやめて欲しい・・・・・・。

あれ、おかしいな。
出会ったばかりの頃みたいに、妙に気恥ずかしい。
クリスの目を正面から見られない。


私のドキドキタイムは突然のインターホンの音によって終了した。

「迎えが来たな。行こう」

インターホンはお迎えの車が来た合図で、クリスは私を伴って部屋を出た。
ホッとしてしまったのは秘密だ。
エレベーターでクリスはにやにやしたからバレてるかもしれないけど知らん顔でやり過ごした。

「おはようございます。クリス社長、奥さま」

エントランスで私たちを待っていたのはクリスの個人秘書のような仕事をしてくれているロイさん。
年齢はクリスの3つ下で大学の後輩なんだとか。

普段からクリスの手の回らない分の代行や雑務をお願いしていて、クリスの持つ特定の会社に所属しているわけではない。クリスの仕事の全体像を知らない私なので実はロイさんのこともよくわかっていない。

「おはよう、今日は予定通り頼む」
「かしこまりました」

「おはようございます、ロイさん」
「お久しぶりですね、奥さま。ますます美しくなられて。どっかの誰かさんが隠すからなかなか私にはお目にかかるチャンスもなく」

ロイさんがクリスをチラチラとからかうように見ながら軽口を叩く。

「葵羽、そいつと目を合わせるな、妊娠する」

クリスが返事に困る私の腰に手を回して歩き出した。
妊娠て。
それはまずい。

クリスにピタリとくっつくようにして車に乗った。

「えー、冗談きついって」

ロイさんがぼやきながら運転席に乗り込み車を発進させた。





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