純恋〜ひとつの光〜
今日も一日中働き終わって、私は家に帰る。

廃れたボロアパート。

「はぁ…」

階段をよろよろと登り、ドアノブを開けた。

「ただいま…」





「遅かったじゃねぇか」

部屋の奥から灯りも付けず、窓から差す月明かりと小さなテレビの明かりでカップラーメンをつまみにして酒を飲む男。

「あ、うん。ちょっと最後のお客さんが長引いちゃって」

「あっそ」

この男こそ、私の元夫。

「太一はどうだったの?」

太一(たいち)は今日、面接だと言っていた。

「早く働けってか?」

そう言って睨まれる。

「ごめん、そういう意味じゃなくて…」

「面接は受かったから。俺だって悪いと思ってんだよ」

不貞腐れた態度で酒を煽る。
側まで行った私にタバコの煙を吹きかけて。

太一と結婚したのは10年前の19歳の時。
私たちは、似たような境遇で恋に落ちるのは一瞬だった。
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