純恋〜ひとつの光〜
「ありがとう。大事にする」

こんな風に誰かと話した事もなかった俺は、この瞬間だけは普通の人間になったみたいに笑う事が出来た。

底なしに明るい彼女の笑顔で、落ち込んでいた心が嘘のように晴れやかになっていく。

なんて可愛らしく笑う子なんだろう。

透明感があってとても綺麗だ。

「お家に帰ったら、花瓶に水入れてそこに入れておけばしばらく枯れないよ」

「わかった」

「せっかくカッコいいんだから、下向かないで、前向いて! 元気出してね! それじゃ、バイバイ!」

「バイバイ」

彼女が去ったあと、思わず口元を隠す。

カッコいいって言われた。

ただそれだけなのに、口元が勝手に緩んで嬉しくて踊り出しそうなくらいだ。

そしてもらった赤のガーベラを俺は大事に持って家に帰った。

するとちょうどその時、本妻である母親と弟も学校から帰って来て俺を睨みつける。

いつもなら嫌な気持ちになって下を向く俺だけど、彼女に言われた言葉を思い出して前を向いて部屋に入った。
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