次期社長の執着愛。 〜御曹司だと知らずに逃げた苦労人女子なのに、社長になって、全力情愛で追いかけてくる。〜

会わす顔ない 桜志side



 聖菜との食事会から一週間。


「はぁ」

「社長、今日のため息朝から数えて二十五回目です」

「……数えんなよ、理人」

「じゃあ聞こえないようにしてくれないかな? 少しうるさいし、というか会いに行けばいいのでは?」


 俺はとてつもなく後悔している。


「……聖菜に会わす顔がない」

「会わす顔ないって、せっかく会いに行けるようになったのに。だけど、桜志。このまま会わないでいたらもう会いに行けなくなると思うけど」

「そうなんだけどさぁ」

「本当、聖菜のことになるとヘタレになるな。今まではズバズバ行動力半端なかったのにどうしたんだよ」


 どうしたもこうしたもない……俺は帰るまで一言も話さなかった。理人たちは「会えてよかったよ」とか「またね」とか普通の挨拶をしていたのに自分は何も話さず帰ってきてしまった。

 前に話を聞いていたはずなのに詳細に聞いて、何があっても好きだと伝えていたのになんと言葉にしたらいいのか分からなくて黙っていた。
 降りた後、少し彼女の表情を見た時とても傷ついた横顔が見えた……とても、傷つけてしまった。

 それなのに、どんな顔をして会いに行けというのか。



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