次期社長の執着愛。 〜御曹司だと知らずに逃げた苦労人女子なのに、社長になって、全力情愛で追いかけてくる。〜
第4章
12. 悪役令嬢になるつもりはないと言う女性がやってきた
「いらっしゃいませ〜」
私は、あの日から仕事に没頭するようになっていた。
あの日、何を話してどう帰ったのかあまり覚えていない。ただ、駅まで送るまで車の中はとても静かで誰も話そうとしなかったのだけは覚えていてもう会うことはないだろうなと思った。
そしてあれから一週間経つが、あんなに毎日来ていた桜志くんは来なくなった。きっとそれが答えだろう。
今でも好きだと言ってはいたけど、あの話を聞いたらもう関わりたくないと思ったのではないかなって私は思う。
「店長、もう時間ですし上がってください。もうすぐ副店長も来られますし、大丈夫です」
「安藤くんが来てから上がるよ。下準備するから」
「でも、店長働きすぎですよ。私たちは助かりますけど、でもこのままだと倒れてしまいます」
「大丈夫。ちゃんと休んでるから。でも、そうだよね。迷惑かけてごめんなさい……上がるね」
それだけ告げて今やっていた作業をきりのいいところまでやって片付けると、私は休憩室に下がった。退勤ボタンを押して、着替えをすると事務作業のためにノートパソコンを取り出す。
本社からのメール確認や提出してくれたシフト希望に合わせて来月と再来月分のシフトを最終調整をし、人数分印刷をした。来月から新商品が始まるので新商品試食会開催のお知らせと来月再来月のシフト表をホッチキスで止めてからひとつひとつ名前を書き、その名前の出勤する日にマークする。
それが終わると新商品のポップを作ろうとノートパソコンはしまって画用紙やペンを取り出した。夏に合わせてレモンと抹茶のメニューがドリンクと合わせて四つある。
ドリンクには点てた冷やし抹茶にレモンの蜂蜜漬けを浮かべたレモン抹茶に、レモネードに抹茶を注いだ抹茶レモネード。スイーツにはふわふわエスプーマの抹茶かき氷、ご飯ものにはランチタイム限定の抹茶を練り込んだざる蕎麦とてん茶のお茶漬けに抹茶の杏仁豆腐が付いた豪華な抹茶御膳だ。ご飯ものは多くて大変だけど一日十食限定なので限定祭りだ。
料理を切り絵で作ってから白の画用紙に貼り付けて太字でメニュー名を書き説明書きを細いペンで書き込んだ。
「ふぅ……これで完成〜疲れたぁ」
伸びをしていると「上手だね、相変わらず」と声が聞こえた。