獣人姫は公爵家メイド──正体隠して仕えるも、次期公爵の想いには鈍感です

第六章:公爵様の嫡男の初恋

｢.....騒がしいな...｡」
同じ頃､シルバエフェクト城の一室では若い青年が書類を片したところだった。
｢おい､クーバ｡何があったのか?｣
彼は側に待機していた専属バトラーに尋ねた｡
専属バトラーは答えた｡
｢それが....公爵様が国境付近で見つけた獣人の方々を､連れてこられたのです｡」
青年は再び尋ねる。
｢ティルトが喚いているんだが?｣
するとクーバはしどろもどろでこう言った｡
｢えーとですね｡実を言うとー､その中に黒猫の方がいらしていてー｡｣
｢なんだってｰｰｰ?!｣
青年は部屋から飛び出して､階下を見た｡
そして黒猫と目が合う｡
彼女はニッコリと微笑んでくれた｡
それに心臓がドキッとする｡
彼は慌てて部屋に駆け戻った｡
｢可愛かったな...｣彼は椅子に腰掛けるとボソリ呟いた｡
その時ちょうど､公爵夫人が部屋の前を通りかかり､それを聞いて満面の笑みを浮かべた｡
「本当に可愛いわよねぇ､あの子｡どうにかしてここに留まってくれる方法ないのかしら｡ねぇ､リゼル｡｣
公爵夫妻には息子しかいないため､夫人は女の子が来ることに喜びを感じていた｡
それに彼女はラビリスゲルの子ではないから､地位､家柄目当てではないだろう｡
公爵夫人の専属メイドリゼルはこう答える｡「それでしたら奥様｡彼女たちをバトラーとメイドとして雇うのは如何です?最初は見習いとして､出来が良ければ公子様のうちのどちらかにつければ良いでしょう｡それにポールが教えてくれたのですが､どうやらラビリスゲルに来たばかりで仕事と宿を探しているようでして、彼女らとっては一石二鳥ですし､私たちは使用人の仕事を割り振れますし､奥様に対してはあの子はここに残ってくれますし損はございませんよ｡｣
｢そうね!お金ならうちははたっぷりあるから給料まだせるし｡それがいいわ!」
公爵夫人はそう言うと彼女の夫に伝えるべく､彼の部屋は足早に向かった。