コドカレ。



「アヤも髪濡れてる」

そう言って、タイガは私の頭にタオルをのせてゴシゴシと拭きはじめた。


「えっ、あ、ありがと……」

「寒くない?」

「うん、大丈夫だよ」

「キス、していい?」

「うん」

私が目を瞑ると、ゆっくりとタイガが近づく気配がする。
部屋は静かで、雨音が響くのみ。
私の心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかって思ったのをよく覚えている。

今まででキスは何回かした事あった。
でも、なんか。こんなに近いのは、はじめてで……。


「アヤの事好きだよ」

「私もタイガの事好き」

真っ直ぐに私の事を見てくれるタイガを本気で好きだと思った。

タイガなら、私の全部をあげていいって思った。

だから――、



「タイガッ、痛っ…痛いよ」

「ごめん、もうちょっと……」

「い、痛いってば!!」

「も、ちょっと、……だから」

あの痛みも乗り越えられたのだと思う。


でも、そんな甘酸っぱい初体験をして1ヶ月後。

私はタイガと別れた。



そして、


「矢野。お前かけられてたんだぞ」

隣りの席の男子が私にそう教えたのは、タイガと別れてからすぐだった。


別れる時に、きちんとした理由を教えてくれなかったタイガ。その答えが分かった気がした。




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