『俺を好きになるな』って言ったのに、幼馴染(転生姫)がフラグを折らせてくれません

第二章「私の記憶、なにかおかしい…?」

〇学校・図書室・放課後

放課後の図書室。
夕陽が窓から差し込み、オレンジ色の光が本棚を照らす。
雫は、試験勉強のために静かな図書室を訪れていた。
図書室の中はほとんど無人で、ページをめくる音だけが空間に響く。
本棚の前で立ち止まり、適当な参考書を探していると、ふと1冊の古びた本が床に落ちる。
思わずしゃがみこんで拾い上げる。

雫「あれ?」

雫が拾い上げた本のタイトルは『鳳凰国の興亡史』。
表紙の一部がかすれているが、そこには見覚えのないはずの紋章が描かれていた。
だが、それを見た瞬間、心臓がきゅっと締めつけられるような感覚に襲われる。
指で紋章をなぞると、なぜか胸がざわつき、指先が微かに震えた。

雫M「……なんでだろう。初めて見る本のはずなのに…どこかで…読んだことあったっけ…この、紋章は…」

ページをめくると
黎天(れいてん)皇子と玲蘭(れいらん)姫』という見出しが目に入る。
その瞬間、雫の脳裏に金の装飾が煌めく謁見の間のような映像が一瞬だけよぎる。
雫が名前を声に出そうとした瞬間、背後から突然、鋭い気配とともに手が伸び、本を取り上げられた。

〇図書室・本棚の間

透真「……お前にはまだ早いよ」

透真が本を閉じて、無表情で雫を見下ろしていた。
夕陽を背に立つ彼の姿は、どこか異様なまでに威圧感がある。

雫「え? 透真? なんで……」
透真「こんな本、どうして手に取ったんだ?」
雫「え、いや……たまたま落ちてきて……」
透真「なら、読む必要はない」

透真の手が本を強く握りしめる。
雫は彼の様子に違和感を覚えながらも、なぜか自分の心臓が早鐘を打っているのを感じた。

透真は微笑みながら、優しい声で囁く。

透真「お前は、俺の隣にいればいい」
雫「……え?」

透真が本を閉じて、無表情で雫を見下ろしていた。
夕陽を背に立つ彼の姿は、いつもの優しい親友とはどこか違い、影のような威圧感を纏っている。
雫は、透真の言葉に妙な既視感(デジャヴ)を覚える。

しかし、それが何なのかは思い出せない。

〇帰り道・夜

夜の風が肌寒く、街灯がぼんやりと足元を照らす。
雫は無意識に腕をさする。
隣を歩く透真は、黙ったままだったが、時折、横目で雫を見ている。

雫「……透真、最近、なんか変じゃない?」
透真「そうか?」
雫「うん。なんていうか、前より……独占欲、強くなった?」

透真が一瞬、足を止める。
そして、雫の方に顔を向けると、静かな声で問いかける。

透真「お前ッッ……」
雫「え……?」
透真「……いや、なんでもない」

透真は再び歩き出すが、その横顔はどこか影を帯びていた。
雫はその後ろ姿を見つめながら、なぜか胸が痛くなった。
雫の胸の中には、小さな疑問が膨らんでいく。

〇雫の部屋・夜

ベッドに横になった雫は、図書室で見た『鳳凰国の興亡史』のことを思い出していた。
繰り返し思い出すのは、あの見出しの名前と、透真が見せたあの瞳の奥の冷たい色。

窓の外には星が瞬いている。
雫はそっとまぶたを閉じ、心の中でつぶやく。

雫M「……透真は、何を隠してるの?」
雫M「そして……どうして、私はそれが悲しいって思うんだろう……」
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