天使の階段
するとその人も、車を降りた。

「紗香ちゃん!」

やばい。

私は必死に逃げようと、背中を向けた。

「ごめん!もうあんな事、しないからさ!」

無視して歩き続ける。

「なあ、車に戻れよ。ここから歩いて帰るなんて、無理だぜ?」

私は急に立ち止まって、相手を見た。

「周りのヤツラもジロジロ見てくるし……恥ずかしいから、さあ、早く……」

仕方ないという顔をして、私はもう一度車に戻った。


車のエンジンをかけて、その人はため息をつく。

「参ったな……てっきり大人しい子だと思っていたのに。」
だから簡単に、できると思ってたわけだ。

「君みたいな子、初めてだよ。」

ここまでくると、もう私のペース。

相手は次も会いたくて、お金を置いていく。


私は柊子みたいに、体は売らない。

でもしっかりお金は稼ぐ。

だから一度会った人とは、二度と会わない。

その時の私は、変なルールに囚われていたんだ。
< 11 / 81 >

この作品をシェア

pagetop