天使の階段
その時だった。

「紗香!」

柊子の声に、体がビクッとする。

首にタオルを巻きながら、柊子は爽やかに近づいてきた。

「あれ?紗香。顔色悪いよ?体調悪いの?」

「ううん。そんな事ないよ。で?何の用?」

私はタオルで、顔を拭いた。

今思うと、この時の私は、どうかしてたんだと思う。

「あのさ、この前会ったタカさん。覚えてるでしょ?」

「タカさん……」

あの帰り際に、ネットリしたキスをしていった人だ。

「うん。」

「そのタカさんがさ。もう一度、紗香に会いたいんだって。」


私に会いたい。

頭から血の気が引いていくのが分かった。


「紗香、タカさんの連絡先、登録してないの?たまに会わないと、金額増えないよ?」

柊子は、所謂“お得意さん”って言う、大金を出してくれる人がいて、お金に困るとその人と待ち合わせをするらしい。

「そうだね。いいよ、会っても。」

もう一度会えばどうなるか、私は知っていたくせに。
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