天使の階段
それから2週間が過ぎた。

もう少しで3ヶ月半。

生理が来る気配は、感じない。

代わりに来たのは、“つわり”のような、吐き気だった。


家で、学校で、授業中も、部活の時も、勉強をしている時でさえ、吐き気はきた。

でも、トイレに駆け込む事さえできない。

ただ、手を口に当て、吐き気が無くなるのを、ひたすら待った。

我慢できなくて、吐きそうになった事なんて、何度もあった。


「ねえ、紗香。最近、具合でも悪いの?」

痩せてきた私を、柊子が心配そうに見た。

「ううん。大丈夫。大会のストレスかもしれない。」

「そっか。最近、タイムも落ちてきてるからね。」

柊子は、私の嘘を信じているようだった。

「ねえ、柊子。」

「ん?」

私は、ゴクンと息を飲んだ。

「……タカさんの連絡先、知らない?」

「タカさんの?」

もうこうなったら、相手に言うしかない。

でも、その時は私は愚かで、せっかく貰ったタカさんの名刺を、捨ててしまっていたのだ。
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