天使の階段
そんなことがあってか、専属契約の書類には、まだサインをしてなかった。

「寧々ちゃん。今度はソファに座って撮ってみようか。」

「はい。」

ソファが設置されるまで、私は端で大人しく待つことにした。


「拓未君。」

「編集長。」

声で分かった。

この壁の向こうに、拓未さんがいる。

「例の女の子の件だが。」

「桜井寧々ですか?」

「どうなってるんだね。本人は、専属モデルの件、あまり乗り気ではないのかね。」

「えっ?本人は、やる気満々でしたが……」

「そうなのかね。実際はまだ、書類にサインをしてくれていないのだよ。」


編集長を通して、私の事情が、拓未さんに伝わってしまった。

「サインを……していない?」

「ああ。なんとか頼むよ、拓未君。」

「はい。」

私のせいで、拓未さんに迷惑をかけている。

でも、私にはまだ、サインをする気持ちになれていなかった。


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