前世で魔王に殺された聖女ですが、ごく平凡な一般人に生まれ変わっても魔王に捕まりました。なんか用ですか?
ベッドの上で膝を抱えて泣いていると足音がする。
金属の擦れる音がする。

「サラ」

やけに良い男性の声がする。魔王だ。
魔王はベッドに上がり、そっとサラの頭を撫でた。

「サラ?」

サラは勢いよく顔をあげると魔王の首を絞めようと押し倒す。
だけど首を絞めることはできなかった。体温と脈を打つのを感じるのだ。ぼろぼろ涙が落ちる。
魔王はずっとサラを見上げている。
そっと頬に触れる。

「嫌いでも憎しみでもサラが俺に向ける感情があるのなら何も無いよりはずっといい」

好かれないなら嫌われようとするなんという悪趣味な思想か。

「……最低ね」

魔王はサラの涙を拭っている。

「それでもサラが欲しい」
「なんでよ。なんで私?」
「……良い眺めだ」
「はあ?」

答えになってない。会話になっていないと考えながら、冷静になる。
気がつけばサラが魔王を押し倒したまま見下ろしている。
すぐに勢いよく魔王から離れた。

泣いていたので顔を洗いに洗面所へ向かった。
洗面所から戻ると呼ばれる。

「サラ、こっちに来い」
「いや」
「1・2・3・4――」
「腹立つ!」

腹は立つが結局魔王の言うことをきいてしまう。

「いつから泣いていた?」
「ほんの少しよ」
「こんなに瞼を腫らしてか?」

魔王はサラに触れてくる。

「貴方には関係ない」

魔王の手を払う。その手を掴まれる。
関係無くはないがそう答えるしかない。
魔王はサラの瞼に触れる程度のキスを落とす。

「さみしかったのか?」
「違う」
「サラ、正直になったほうがいい。お前がすがり付けるのは俺しかいない」
「……貴方にはわからないわ。私がどんな気持ちなのか」
「俺が憎いだろう?」
「ええ。とても」
「それでもこの先、憎い男の妻になり、子を産むんだ」

サラは目を見張った。

「……無理」

口から自然とこぼれた。この先絶望しかない。
< 14 / 22 >

この作品をシェア

pagetop