超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する
「どうしたんだ、テラス」

「え?変だった?」

やり方を間違えただろうか。

「いや、キスの仕方じゃないよ」

思わず笑ってしまうアンセム。

「じゃあ、なにが変?」

「変と言えば変だ。ナミルに他に何か言われたのか?」

「えっ!?」

アンセムはナミルからどこまで聞いたのだろうか。
荷が重い、の行は聞いていないのだろうか。
テラスは混乱した。
一方アンセムも、テラスがナミルからどこまできいたのかわからず混乱した。
セックス以外のことも、何か言っているのだろうか。

「いや、テラスにしては唐突に積極的だったから」

「私だって、たまには頑張るんだよ」

必死に訴えるテラス。

「テラス、無理はしなくていい。オレはちゃんと待てるから」

テラスは何を焦っているのだろうか。

「無理じゃないもん」

「いや、前科があるから言葉に説得力がないよ」

「なにそれ!」

「明らかに無理してる顔じゃないか」

「自分の顔は鏡がないと見れないから、そんなこと言われても困るよ」

テラスの発言にガックリと脱力してしまうアンセム。

「なに、その反応」

「いや、テラスらしいと思って」

「なにが?私らしいって何?」

いつになく食い下がるテラス。

「私だって、できるよ。アンセムのこと好きだから、頑張れるよ」

「できるって?」

「だから、その…」

「セックスのことか?」

ストレートに言われてテラスは耳まで真っ赤になった。

「そうだよ」

「テラス…」

アンセムは小さな子どもに言い聞かせるように、目線をしっかり合わせて言った。

「それは、テラスが自然にそうなりたいと思えるようになるまで待つって決めたんだ。頑張ってすることじゃない」

「でも、できるもん。大丈夫だよ」

「テラス…」

引かないテラスにアンセムは困り果てた。
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