【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
(今度は、少なくする。これは、キープというよりも、水晶玉の気分に合わせて調節するみたいね)

 水晶玉が発する空気を、ほどなく冷たくしてキープする。でも、水晶玉自体はまるで意思を持っているかのようだった。

 それはまるで、感情を持っているかのよう……。

「……ほぅ」

 神官の一人が、少しだけ声を上げた。まるで、驚いたとばかりの声。

 けど、彼がどういう表情をしているかはわからない。私は、水晶玉に意識を集中させることで精一杯だったから。

(……もう少し、多く)

 多く、少なく、少なく、多く。

 水晶玉にどんどん翻弄されて、それでも必死に食らいつく。

 意識が徐々にふわふわとし始めるのは、魔力が枯渇する予兆なのだろうか。

(私にできることなんてない。……そう、思ってきた)

 頭の中に、過去のことが浮かぶ。

 ずっと孤独だった。それが、苦しかった。

 けれど、ここにきて、私は居場所を見つけた。ここにいていいんだよって、言ってもらえた。

 それに、私を愛してくれる人たちが出来た。

 私は、この居場所を守らなくちゃならない。

(そのためには、これくらいで躓いていては、ダメなの――!)

 そう思うとほぼ同時に、水晶玉がまばゆいばかりの光を放つ。

「――シェリル!」

 遠くから、ううん、すぐ近くから。旦那さまが私のことを呼んでいるのがわかった。

 なのに、返事は出来ない。目の前の水晶玉が、私の身体を包み込む。

(こ、れって……?)

 目を一瞬だけ見開いて、あまりのまばゆさに慌てて目を閉じた。

 そして、私は――そこで、意識を失っていた。
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