【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「なんだか、一つくらい掴めちゃいそうです」

 普段の私ならば、そんなロマンティックなことは言わなかっただろう。

 このときの私は、柄にもなく興奮していたのだと思う。

 それは星空が美しいことだけじゃない。無事戻ってこれたこと。なによりも――この国を救えたことが嬉しくてたまらなかった。

「……そうだな」
「……私、こんな日が来るなんて思わなかったんです」

 ぽつりとそう零す。

 旦那様が黙って私の言葉に耳を傾けてくださる。

「ずっと一人でした。誰からも愛されないまま、きっと一生を終えるんだって。そう、思っていたんです」

 イライジャ様と婚約していたときも、私の頭の中にはそんな考えがあった。

 そして、婚約が解消されてからも――。

「けど、どうしてでしょうか。……私、今、すっごく幸せ」

 星に向かって手を伸ばして、私はそう呟く。旦那様がなにも言わないのは、優しさからなんだろう。

「……星を掴めそうだって思ったのは、きっと間違いですね」
「シェリル?」
「私は、もう星を掴んでいるんです。……手放したくない場所が、私にとっての星なんです」

 それは旦那様のお隣であって、リスター伯爵家そのものである。

「だからですね、旦那様。――出逢ってくださって、私と結婚してくださってありがとうございます」

 彼に顔を向けて、にっこりと笑う。すると、彼が驚いたように目を見開いた。

「こんなロマンティックなこと、私が言うのはちょっと変ですね」

 自嘲気味の笑みに変えてそう言えば、旦那様はゆるゆると首を横に振られた。

「変じゃない。……シェリルには、そういうのがよく似合う」
「……そうですか?」
「あぁ。……それに、礼を言うのはこっちなんだ」

 不意に表情を整えて、旦那様が私を見据えた。真剣な眼差しに射貫かれて、心臓が高鳴る。
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