セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
 その予定が決まったのは、今から約一週間前のこと。毎日変わらず送られてくる悟からのメッセージにそれが書かれていた。

 清塚の集まりがあるから、どうしても一緒に出席してほしいと。

 今の志歩にとってはあまりにも悩ましい要望。離婚を提案している状況で、志歩が出席するのは、どう考えても望ましくない。けれど、その一方で、悟の妻の肩書きがある間は無下には断れないとも思った。

 志歩は丸一日悩み抜き、結局はその集まりに参加すると決めた。離婚についての話し合いをちゃんとしていない以上、今はまだ妻としての役割をしっかりと果たすべきだと結論付けたからだ。

 それに悟と話し合ういい機会でもある。志歩は今日の集まりが終わった後、離婚に向けての話をするつもりだ。

 ついにその話をするのだと思うとどうしても落ち着かないが、今はまだ勤務中。余計なことを追い出そうと軽く頭を振る志歩に、加奈が優しく問いかけてくる。

「もう腹は括ってるんでしょ?」
「うん。元々こっちから連絡しようと思ってたところだったからね。ちゃんと決心はしてるよ。これ以上、加奈の家に迷惑かけ続けるわけにもいかないし、いいタイミングだったかな」

 加奈の家に世話になって早三週間。滞在費を渡しているとはいえ、これ以上は甘えられない。

「別に我が家のことは気にしなくていいんだって。志歩と過ごすの、家族みんな楽しんでるんだから」

 加奈も、彼女の家族も、この調子で人がいいから、随分と助けられた。志歩は加奈たちの優しさに心から感謝している。

「ありがとう。加奈の家族は本当に優しいよね。おかげでゆっくり気持ちの整理ができた。決心がついたのも本当だから大丈夫だよ」
「なら、よし! じゃあ、退勤までもう少し、仕事頑張ろう」

 加奈と頷き合い、その後は集中して残りの業務に取り組んだ。
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