セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
「僕たちが初めて顔を合わせたときのことは覚えているかな?」

 脈絡のないことを言われて戸惑うも、その問いには小さく一つ頷いてみせる。

「……はい、覚えています」
「志歩さんにとってはそれが僕を認識した最初の日だよね。でも、僕は違う。その日よりも三ヶ月も前から志歩さんを知っていた」

 その言葉に驚きながらも、慌てて記憶をたどる。

「えっと……三ヶ月前だと久枝さんが入院して間もない頃だと思うんですけど」
「そうだね。入院してまだ半月くらいだったんじゃないかな。初めて久枝さんの面会に行った日に志歩さんのことを知ったんだ」

 必死に過去を振り返ってみるが、まったく思い出せない。これほどのハーフイケメンに会っていたなら忘れない気がするが、どうしてもその頃に悟と会った記憶を掘り起こせない。

「ごめんなさい。私はまったく覚えていなくて……」
「それは当然だよ。志歩さんはほかの患者の対応にあたっていて、それをたまたま見かけただけだから」

 一方的に見られていただけなのだとわかり、ほっと安堵する。

「なんだ。そうだったんですね」
「志歩さんは患者と真摯に向き合っていた。ただ、その患者にかなりきつくあたられていてね。それで自然と目がいってしまったんだ」

 そういうことかと納得する。泣いたり喚いたりしている患者を宥めているところだったのだろう。

「上手く体が動かないとストレスが溜まりますから、そういうこともありますよ」
「志歩さんは本当に優しいね。あの日の志歩さんも患者に対して怒ることはなく、むしろ優しく寄り添っていた。僕はね、その姿を見て、志歩さんに一目惚れしたんだよ」
「っ、一目惚れ!?」

 悟の爆弾発言に、目玉が飛び出しそうなほど大きく目を見開く。

 その話が本当なら、二人が過ごしたこれまでの時間は、随分と意味合いが変わってくる。初めてのデートも、プロポーズも、ゆっくりと愛を育んでいった結婚生活も、何もかも見え方が変わってしまう。

 俄には信じがたい話にひどく困惑の表情を浮かべていれば、悟はおかしそうにくすくすと笑いをこぼす。
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