セカンドマリッジ ~病室で目覚めたら、夫と名乗るイケメン社長との激甘夫婦生活が始まりました~
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 志歩が眠ったのを確認し、悟はそっと自室へと移動する。

 部屋に入るとすぐに携帯を取り出し、電話をかけた。

「遅くにすみません。急遽ですが、護衛をお願いしたい人がいます。可能ならば明日からでもお願いしたい」

 相手は馴染みの警備会社の人間。依頼をすれば可能な限り早急に対応してくれるだろう。

 悟は事情を話し、志歩を護衛してほしい旨を伝える。

 一般的に考えれば、元カレに復縁を迫られた程度で護衛を依頼する人はあまりいないだろう。だが、痴情のもつれというのは、意外に怖いものだ。軽視していると取り返しのつかないことになりかねない。

 それに今の志歩には、清塚グループと接点ができたことで生まれたウィークポイントもある。やはり警戒は最大限にしておくべきだろう。

 今の悟にとって志歩以上に大切なものなど存在しない。志歩を守るためならばいくら金を積んだって構わない。彼女が平穏無事であればそれでいいのだ。

 悟は電話を終えると深くため息をつく。それは何のため息か。

 きっと、志歩が無事だったことに対する安堵と、彼女を外敵から守ってやれなかった情けなさと、これからの志歩の安全への不安、それらすべてから出てきたものだろう。

 志歩の前では冷静さを保っていたが、実際にはかなり動揺していたのだ。志歩がつらい目に遭ったのではないかと思うと、恐ろしくてたまらなかった。このままこの家に閉じ込めておきたいと思ってしまうほどに不安になった。

 それでも、それが志歩の幸せにはならないとわかっているから、悟は自分が持てるものを最大限使って彼女を守るしかない。

 何者にも志歩は傷つけさせないと固く心の中で誓う。たとえそれが自分自身であっても。

 悟も志歩に対する爆弾を抱えてはいるが、それは直接彼女を傷つけるものではない。志歩の受け取り方次第で変わるものだ。だからこそ、慎重にならねばならない。

 己の欲に任せて、志歩を求めることは許されない。彼女の気持ちに合わせて寄り添うことが、今の悟にできる唯一のことだ。

 悟は寝室へ戻ると、志歩の髪にそっと触れる。そして、小さな声で「僕が守るから」とつぶやいた。
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