俺様御曹司は姉御肌で破天荒な美女を堕とせるか?
その土曜日優依は祖母と一緒に施設の見学に行ったと言うより研吾が車を出してくれて連れていかれたのだが…

住宅街の中にある高級そうな外観の施設だった。

繁華街から徒歩十分位なのにとても静かなところだった。

施設の庭も広く希望すればガーデニングも楽しめるそうだ。

花壇の一区画を借りられるらしい。

花を育てるのが好きな祖母は何よりそれが気に入ったと言った。

お部屋も一人部屋で寝室とリビングダイニングにミニキッチンとお風呂とトイレがついている。

洗濯はコインランドリーのようになっていて自分でしてもいいし、スタッフに頼んでもいいらしい。

大浴場もあって介護が必要な人用のお風呂も別にあるので“動けなくなっても安心よ“と言って祖母はご機嫌に色々案内してくれた。

食事も三食食堂で食べてもいいし夜だけとか外出するなら夜も不要と言えばいいらしい。

祖母は朝食と夕食を食堂で食べるつもりらしく、お昼は簡単に自分で作るそうだ。

そんな風に自由の利く所も嬉しいと言っている。

結城グループの関連会社が運営しているそうで、結城グループのホテルやリゾート施設の利用も割引があるらしい。
でも高そうなんだけど大丈夫なのかなあ。

内心不安な優依の心を読んだように

「俺の家族割引だから全然お金の心配は
しなくても大丈夫。おばあちゃんの
年金と貯えで、後三十年は
余裕でいられるよ」

と、そっと優依に耳打ちした。

「家族割引って何?」

「だって将来は俺のおばあちゃんに
なるんだから当然だろ」

「ちょっと何言ってんの、
そんな話してないよね」

と小声で話す二人に

「何もめてるの? 
優衣はここが気に入らないの?」

と祖母が心配して声をかける。

「そんなことないよ。おばあちゃんが
気に入っているなら言う事ないよ」

「お金のことも心配しないでね。
研吾さんが便宜を図ってくれて
おばあちゃんの年金と貯金で
何とかなるからね。
優依は自分の事だけ心配しなさい」

祖母はしっかりその気になっている。

家族割云々は後でしっかり問い詰めることにして、お昼を研吾に奢ってもらって家に帰ってきた。

2ケ月後、祖母の施設への入所も済ませて優依は結城グループで研吾の第二秘書として働くことになった。

でも研吾と一緒に住むつもりはない。

祖母と暮らしていた家から通うつもりでいる。

前の会社に行くより少し近くなったので全然不便はない。

佐藤健一にも辞表を出した日に会社の会議室で、しっかり話をした。

相手が結城研吾だと知ると、自分に勝ち目はないと悟ったようで、何とか納得してくれた。

彼もその1週間後には辞表を出したようだ。

優依の退職の1ケ月後に実家の会社に戻ることになっている。 

最後に話をしたときに男泣きしていたのには参ったが何とかけじめをつけて、新しく踏み出せる事になってよかったと思う優依だ。

研吾は戸建ての家に一人で住むなんて危ないと言ってマンションに引っ越して来いと言ってしつこく迫っていたけれど、優依が押し切った。
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