悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
 彼が安堵したように笑う。いつも上品な彼がこぼした無邪気な笑顔がどこかかわいくて、胸がキュンと疼いた気がした。



 その日の夜。私は父のいる書斎を訪ね、真宙さんとの関係を報告した。

「引き続き検討中ではあるけれど、結婚を前提にお付き合いをしていこうって話になったの」

 父は一瞬驚いたように固まったが、次の瞬間には「そうかそうか」と豪快な笑顔になった。

「だから言っただろう。武凪くんは璃子に相応しい男だって」

「私に相応しい、はちょっと傲慢じゃない? どっちかっていうと、私が真宙さんに相応し――って」

 話しているそばから父がそわそわしだし、腰を浮かせて「母さん~!」と声を張り上げる。妙に揚々とした声に、嫌な予感がした。

「ちょっと待って。なんて報告しようとしてる?」

「そりゃあもちろん。璃子が婚約を決めたと――」

「どうして婚約になっちゃったの? お付き合いって説明したばかりでしょう!?」

「結婚を前提とした交際だろう? 婚約じゃないか」

「違う違う、早とちりしないで。あ、真宙さんにプレッシャーをかけるような真似はくれぐれもしないようにね?」

 それはパワハラよ?と念を押して、はやる父を宥める。

 明日、病院で真宙さんが父から根掘り葉掘り聞かれなければいいんだけど。浮かれ切って母に報告する父を見ていると、不安しかなかった。



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