悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
 一週間後の土曜日。私は母の通院に連れ添って、父の勤める永福記念総合病院に向かった。

 病院は家から徒歩二十分程度。お天気さえよければ歩いていくのだが、今日はあいにくの雨。気温も低く冷え込んでいるので、タクシーを使うことにした。検診を受けにいって風邪を引いたのでは、元も子もないから。

「武凪さん、働いてらっしゃるかしら?」

 タクシーの中でそう漏らしたのは母だ。真宙さんとまだ顔を合わせたことがなく、父があまりにもいい男と連呼するものだから、気になっているらしい。

「もしかして、やけにお洒落をしているのはそのせい?」

 メイクが普段以上に入念だし、検診にブランドもののバッグを持っていくなんて、今までしなかった。あからさますぎる……。

「野暮ったいお母さんなんて思われたら嫌でしょ?」

 チークが綺麗にのった頬を押さえながら母が言う。

「そんなこと思われないから大丈夫よ。だいたい、検診で顔色が隠れるほどお化粧しちゃダメじゃない。お医者様は顔色だって見ているんだからね? ……まあ、うちの場合は担当医がお父さんだから許されるとしても」

 立場が立場なだけに外来にはあまり顔を出さない父だが、この日ばかりは診察室へやってきて母を診てくれる。母を大事に思ってくれているのがわかる。

「真宙さんは勤務中なんだから、ご迷惑をおかけしないようにね。会いたいなんて無茶言っちゃダメよ?」
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