悪辣外科医、契約妻に狂おしいほどの愛を尽くす【極上の悪い男シリーズ】
 自販機や売店なら近くにあるのだが、母の言うアレ――『永福記念総合病院限定・アサイー炭酸水』は、外来棟のさらに奥、入院棟の脇にあるコンビニにしか売っていない。

 ビタミンや食物繊維、カルシウムや鉄分なども含まれている栄養たっぷりの炭酸水で、遠方からわざわざ買いにくる熱心な愛飲者もいるのだとか。

「確か、こっちが近道だったような……?」

 中庭を突っ切るルートも考えたが、なにぶん外は雨。なんとか院内の連絡通路を駆使して目的地に向かう。

 改築を重ねることで入り組んでしまった廊下を伝い、入院棟を目指すけれど――。

「あれ……」

 気が付けば真逆の検査棟にいて、見たことのない通路が続いている。

「曲がる場所、間違えたかな……?」

 フロアマップを頼りに、なんとか入院棟らしき場所に辿り着いたものの。

「ここ、棟のどの辺りだろう?」

 いっそ外に出て歩こうか。そう悩んでいた時。足元に小さなボールが転がってきて、危うく蹴り飛ばしそうになった。

「おおっと」

 見れば子どもたち三人がゴムボールを転がして遊んでいるではないか。

 パジャマを着ている彼らは、きっと入院患者だろう。点滴をしていないし顔色もいいから、退院間近なのかもしれない。

 でもいくら元気だからといって、患者や体の不自由な人が通るこの道でボール遊びはいただけない。

「ここで遊んでいたら危ないよ」

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