透明なエンゲージリング
しかしエミリーが入院して数日後、リオンのスマホに悲しいメッセージが届いた。

『移植手術、ドナーの都合で受けられなくなっちゃった』



リオンはメッセージを貰ってすぐ、エミリーがいる病室に駆け付けた。

夕日がオレンジ色に普段真っ白な病室を染めている。病室のベッドの上にはエミリーが座り、天井をぼんやりと見つめていた。その目は赤く腫れており、彼女が先ほどまで泣いていたことがわかる。

「エミリー」

リオンが声をかけると、エミリーの肩がびくりと跳ねた。そしてリオンの方をゆっくりと見る。視線が絡み合った瞬間、エミリーの目に涙が浮かんでいった。

「……手術、受けたかった!普通の体になりたかった!」

子どものように声を上げて泣き出したエミリーを、リオンは駆け寄って抱き締める。リオンの瞳からも涙が溢れてきた。

「俺も悔しいし悲しい!神様は意地悪だ!」

エミリーの心臓が激しく脈打つ。それをリオンは体で感じた。この心臓が今にも止まってしまうのではないかと不安になる。しかし、その不安を抱えているのはエミリーも同じだとリオンは察していた。
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