透明なエンゲージリング
エミリーが大きな声を出した。図書館にいた人の視線が向けられる。エミリーは俯いたまま立ち上がり、リオンの手を掴んだ。

「来て。ちゃんと話すから」

そう言うと、リオンの手を引いて歩き出す。掴まれた手はあまり力が入っていなかった。

「エミリー」

リオンは話しかけたものの、エミリーは無言で歩いて行く。やがて公園にたどり着いた。公園と言っても、ベンチとブランコがあるだけの小さなものである。

エミリーはベンチに座った。リオンもその隣に座る。エミリーはまだ俯いていた。

「エミリー、大丈夫かーーー」

リオンの目が見開かれる。エミリーの頰が濡れている。彼女は泣いていた。大きな瞳から次々と涙が溢れていく。

「……リオンの告白、すっごく嬉しかった。だった私もリオンのこと好きだから」

両想い。その言葉にリオンの胸が跳ねる。しかし、エミリーは悲しそうに泣いていた。

「私、普通の女の子じゃない!」

そう言い、エミリーはいつも被っている帽子を脱いだ。リオンの目が見開かれる。そこには、あるべきはずの髪の毛がなかった。驚くリオンにエミリーは「引いたでしょ?」と涙を拭う。
< 9 / 14 >

この作品をシェア

pagetop